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Music Is   ~おんな、ときにおとこ、うた~  

渡辺敬介個展

 

長い自粛期間を経てこの度、日本人画家の渡辺敬介氏の展覧会「Music Is~おんな、ときにおとこ、うた~」の開催をもってギャラリーを再開することとなりました。この展覧会は、刺激的で時に人間の根源的な身体スケッチ、巻物、裸体の画冊などで構成されています。特にコロナウイルスが世界的に大流行した今、誰もが人間の身体のもろさや脆弱さを感じ、無防備さを実感しています。渡辺の作品に見られる演劇的なシーンは、私たちの身の回りで繰り広げられるシュールな悲劇の感覚とよく相関しています。 裸体の大胆で魅惑的なポーズは挑発的なものとして捉えられるかもしれませんが、裸体の人間の肉体性や魅力的な姿を通した性的な訴えは、絵のメインメッセージではありません。ここでの、絵画上で繰り広げられる、身体的表現は、表層的、誇張的でありながらも、そのテーマと鑑賞者との間の距離を失くし、官能的イメージをまといつつ、目指すところの意味へと私たちを誘います。

 

このような表現の仕方は、見る者の側で、その息づかいを感じ、各部分が生き生きと動き出すように感じるまでに作品のより内部へと導いてゆこうと、誘っているようなものではないでしょうか?絵画的なシーンは演劇的なシーンへと進化していきます。行為は、劇場というコード化された空間の中で、劇場のシーンをあざ笑うようにして行われます。

 

渡辺の創造的表現の力は、見ることや感じることへの直接的な効果を信じることにあります。作家にはシンボリックなサインへの執着はありません。それどころか、身体は身体としての文字通りの意味で扱われます。ここで言う文字通りの扱いとは、比喩を排したものとしてであって、並外れた軽やかさと即時性をもって、一身体のあらゆるニュアンスや衣服のディティール、髪の毛、レースのウェーブ、手袋、指、などを、そのものとして、描き出されていきます。

 

アーティストは常に生身のモデルを使って、リアルタイムでスケッチを作成する、インスピレーションを大切にした制作を行なっています。音楽家であった渡邉は、音楽の経験そのものが絵の基礎になっています。彼の作品はクラシック音楽から生まれ、その影響を受けながら発展しています。時間性は空間に反映されています。作家は、動きのエネルギーや様々な表情、モデルのポーズを時間の流れの中で捉え、素早いテンポで描いてゆきます。瞬間そのものの質感と独特の感覚が、紙の上に痕跡を残します。

 

洗練された日本の絵画技法が自然な流れの表現を作り出しています。

身体の肉体性は、繊細な、煙のような黒墨の陰と、彼の線の並はずれた軽やかな光によって生みだされます。無駄のない線と美的な緊迫感は目を見張るものがあります。彼の作品は、日本の美学の特徴である、洗練された官能性とエレガントなシンプルさの縮図といえるかもしれません。

ザルツブルクのオスカー・ココシュカが創設したアカデミーで学んだことが、彼の美意識の一部分を占めています。このことは、彼のヌードの絵にヨーロッパの異文化的なセンスが加えられるという影響をもたらしました。渡邉はピナ・バウシュの親友であり、彼女の舞踊団のリハーサルを生でスケッチする機会がありました。日本の伝統的な画冊にアレンジされたこのスケッチシリーズも展示されています。

works
Keisuke Watanabe

画家・音楽家

関西方面で活躍している新進画家の渡辺敬介さん(京都市上京区)がこのほど北京で、国際交流基金の助成を得て「ワークショップ展示 渡辺敬介展」という一風変わった美術交流を行った。
中国・中央美術学院の画廊に作品を展示する一方、日本で絵画展を開いたこともある画家、呉長江・同学院助教授と二人で京劇俳優をモデルに写生しようという試み。渡辺さんは光や動きを大切にして文楽や舞妓さんを描いてきたが、手法の異なる中国画家が同じ対象をどう描くか、その対照が注目された。
会場になったのは、清朝の乾隆帝の書院内の院子(中庭)。伝統的な建物に囲まれた静かなたたずまいは京劇俳優の写生にはピッタリの環境で、二人は京劇の様々なポーズを求めながら写生し、興味深そうに見ていた。
呉助教授は「渡辺さんとは訪日以来の親友だが、彼の手法には興味を持っていた。肖像画や裸婦像といった動きの少ない作品が多い中国では、非常に印象深い作品です」と"競作"を楽しんでいた。
一方、同美術学院で開かれた展覧会も中国の著名画家が多数訪れるなど盛況で、中国側からは「旧ソ連のリアリズムの影響を受けた中国の静的な写生とは全く異なる手法。非常に新鮮で、啓発されるところが多い」と高い評価を受けていた。(北京・高井潔司)

「国際交流基金助成の下、北京でのワークショップ・京劇女優を競作するの新聞記事から」

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